2018.10.04
秋雨の中、すっかり秋らしい気候になってきました。学校説明会も公立私立ともに盛んになってまいりました。今回は、昨今よく耳にするようになった『IB(International Baccalaureate:国際バカロレア)』について、ご紹介するとともに、新設された『横浜国際高校IBコース』についても情報共有させていただきます。今週は国際バカロレアの基本的な知識についてです。
国際バカロレアとは?
“国際バカロレア(こくさいバカロレア、英: International Baccalaureate)”とは、国際バカロレア機構(IB:International Baccalaureate)が提供する国際的な総合教育プログラムで、その教育の目的は以下の3つを軸としています。
・世界の複雑さを理解・対処できる生徒を育成すること
・未来へ責任ある行動をとるための態度とスキルを身に付けさせること
・国際的に認められ,通用する大学入学資格(国際バカロレア資格)を取得し,大学進学へのルートを確保すること
高校生のIB教育
IB教育は3歳から19歳までを4つに区分した教育プログラムが用意されています。高校生のプログラムは「DP(ディプロマ・プログラム)」と呼ばれ、2年間の履修を経た後、最終試験を経て所定の成績を収めると、国際バカロレア資格という海外大学入学資格を取得することができます。
授業は、日本語を除くすべての科目を英語で学習するフル・ディプロマ・プログラムと、日本語と両方で行うダブル・ディプロマ・プログラムがあります。
知識詰め込み型ではなく、主体的に考え、意見を述べ、議論しながら問題解決を目指す教育を行っています。
海外大学の受験資格を得られる”一条校”と呼ばれる認定校は、首都圏にも複数あります。
東京
東京学芸大学附属国際中等教育学校
東京都立国際高等学校
玉川学園中学部・高等部
神奈川
法政大学国際高等学校(旧名:法政女子)
横浜国際(新設・来年度IB認定予定)
埼玉
筑波大学附属坂戸高等学校
昌平中学高等学校
IBコース進学におけるメリット
本質ではないですが、ものすごく簡単に言うと、IBの最終試験の得点はTOIECのスコアのようなものです。IB教育の卒業試験時のスコアが国際的に通用する学力のものさしになります。
例えば、商社の就職試験ではTOIECのスコアを一定以上とっていることが要件だったり、一部の面接をパスできたりします。
同様に、一定以上のIBスコアを持っていることで、海外大学への出願の要件と判定に利用されるケースがあります。もちろん、仕事のレベルに応じて必要なTOIECのスコアが変わるように、大学に応じて必要なIBのスコアも変わります。
また、IBの教育プログラムは高校レベルを超える内容も多く、大学進学後も学習したIBプログラム単位が大学の単位として認定される等のケースがあります。
以上から、進学においてはメリットとして、海外大学進学に役立つ資格やスコアを得られることが最大の魅力です。
世界100ヶ国以上、20,000校以上の大学の入学資格・受験資格が付与されるため、海外の大学進学にかなり有利です。一定以上の水準を満たした資格者は大学での履修科目の免除、卒業単位となる場合もあります。
また、日本の大学でも多くの大学でAO入試や帰国子女特別選抜等の出願資格の一つとして募集要項に明記されています。国際バカロレアのスコア等を活用した入学者選抜を行う例もあります。
また、大学進学を考慮しなくても、研究課題を決め、自分で調査・研究を行って学術論文にまとめたり、論理的思考力を養ったり、課外活動としていろいろな人と共同作業することを通じて社会経験を積んだりするIBのカリキュラムは、一般的な学校ではなかなか体験できない学びになり得るでしょう。
2018年度海外大学進学実績
例として、東京学芸大学附属国際中等教育学校と都立国際高校の進学先を列挙します。
①東京学芸大学附属国際中等教育学校(海外大33名)
Beloit College 2
Kingston University London 1
Swarthmore College 1
Bucknell University 1
Knox College 1
The University of British Columbia 1
Colby College 1
Leeds Arts University 1
The University of Melbourne 1
Connecticut College 1
Middlebury College 1
The University of Queensland 2
Denison University 1
Mount Holyoke College 1
The University of Western Australia 1
DePauw University 1
Muhlenberg College 1
University of Nebraska Omaha 1
Griffith University 1
Pomona college 1
University of Oregon 1
Grinnell College 2
Ryerson University 1
University of Colorado Boulder 1
Harvard University 1
Sewanee:The University of the South 1
Yale University 1
Ithaca College 1
Skidmore College 1
Yale-NUS College 1
(引用:学校HPより)
②都立国際高校IBコース1期生(海外大60名)
University College London 1
University of Edinburgh 1
King’s College London 3
University of Manchester 1
University of Bristol 1
Goldsmiths, University of London 3
Oxford Brooks University 2
School of Oriental and African Studies, University of London 1
University of East Anglia 1
University of Essex 1
University of Exeter 1
University of Kent 1
University of Reading 1
University of Southampton 1
University of Sussex 4
University of West Scotland 1
University of Minnesota-Twin Cities 1
Purdue University 1
American Univerrsity 1
Arizona State University 1
Colorado State University 1
George Washington University 1
Illinois Institute of Technology 1
Miami University 1
University of Arizona 1
University of Illinois at Chicago 1
University of Massachusetts-Boston 1
University of North Carolina 1
University of Melbourne 2
Australian National University 1
University of Sydney 2
University of Queensland 1
University of New South Wales 2
University of Toronto 3
University of British Columbia 5
Western University 1
York University 1
University of Hong Kong 1
Hong Kong University of Science and Technology 1
Chinese University of Hong Kong 1
Maastricht University 1
Radboud University 1
Jacobs University 1
(引用:学校HPより)
IBコース進学におけるデメリット・注意点
海外進学やその他の進路にも有利で、授業も国際色豊かな内容になっているIBコースですが、デメリットはないのでしょうか。
まず、IBコースはIBのカリキュラムと一般的な日本の高校のカリキュラムの両方こなすことになります。高2からIBのカリキュラムに取り組む学校がほとんどですので、特に高1のうちは、一般的な日本のカリキュラムを出来るだけ進めておくことになり、授業が毎日7時限まであるような時間割になりがちです。その上で部活もやる場合は、ハードな学校生活は覚悟しておいた方がよいでしょう。さらに大学入試を一般入試で突破しようとした際には、必要な科目の学習に割ける時間が必然的に少なくなりますので注意が必要です。
また、学校によって同じIBコースでもどの科目を英語で行うかが異なる点も注意が必要です。「フル・ディプロマ」を採用している学校はオールイングリッシュで行いますし、卒業後の海外大学を視野に入れてます。一方、「デュアル・ディプロマ」を採用している学校は、どの科目を英語で行っているのかが異なりますし、海外大学進学は視野に入れていませんと明言する学校もあります。
進路選択のポイント
以上のメリットとデメリットを踏まえ、高校卒業の先をしっかり考えて選択する必要があるコースであると言えるでしょう。単純に英語が好きだからではなく、問題解決力をつけたい、海外の大学でやりたいことがあるなど、どういう自分でいたいかを掘り下げていきましょう。
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