湘ゼミコラム

高校受験・入試

直前期受験生の心理的ケア2~ストレスケアのキホン~

2018.12.20

んにちは!

併願校が確定し、ほっとひと安心したころでしょうか。それとも推薦で受験を終えた友人をみてうらやましさを感じているでしょうか。

今回は、前回に引き続き、受験生におすすめしたい心理的ケアについて、心の仕組み理解に役立つ内容をご紹介いたします。

ネガティブな気分を軽減するためのキホン!

ストレス対処の初手は「自分の状態に気づくこと」であり、前回はそこを中心にお伝えいたしました。そして問題となるのは、心の自動回復機能(レジリエンス)が働きづらい状態や、ストレスを過大に悪いものととらえる考え方そのものでした。

辛い気分への対処方法は本当に色々な方法がありますし、効果は個人によって千差万別です。

それでもある程度共通の方法はあります。以下はその基本的なルールです。

基本ルール:ネガティブな感情を頭の中だけで処理しようとしてはならない。

受験期のストレス対処で最も避けるべき行動は、頭の中で辛い場面について延々と繰り返しイメージして時間を無為にすごしてしまうことです。

そもそもストレスをともなうネガティブ感情って「大変しつこい」と感じませんか。

もうだいぶ前の出来事なのに、何度も何度も思い出したり、全然関係ない過去のネガティブな出来事も一緒に思い出させたり、実際にはまだ起きていない未来のことなのに失敗すると決めつけたイメージばかり繰り返し浮かんできたり。あの手この手であなたをネガティブ感情の中にとどまり続けさせようとしてきます。

その罠にまんまとはまってしまうと、

『辛いことのイメージが浮かぶ⇒ネガティブな気分になる⇒勉強に集中できない⇒さらにネガティブな気分になる⇒別の辛いイメージが浮かぶ⇒さらにネガティブな気分になる』のループになります。

それを避けるためにはネガティブな気分になった段階で、

「外に出して見えるようにすること」

「体を使うこと」

でしっかり対処しましょう。

今回と次回でいくつかの対処方法をご紹介いたします。今の自分に合っていると思えるものを実行してみてください。

まずは気分転換・気晴らしで解消できればOK!

気分転換や気晴らしは有効です。強いストレスを感じた段階で、自分にあっているものを実行しましょう。科学に有効だと認められた「気晴らし」は以下の4種類です。これらで辛さが軽減でき、集中力が回復できているようであれば問題ありません。

運動系: 歩く、走る、泳ぐなどの有酸素運動やダンスはストレスや不安を軽減し、速足で散歩をすればイライラ解消に効果的です。歩くリズムを一定にすることでさらに効果が高まります。

音楽系: 音楽は脳内で高揚感を高めるドーパミンの分泌を促し、ポジティブな感情を手助けします。ただし、攻撃性を感じる激しい音楽は逆効果なので要注意です。

呼吸系: 口ではなく、より脳に近い鼻で深く息を吸い、酸素を取り込み、ゆっくりと鼻から吐き出す。呼吸が整うと、穏やかで幸せな気分を助けるセロトニンが分泌され、ストレスの軽減を助けてくれます。

筆記系: 自分の気持ちや考えを「偽らずに」ノートに書き出す。辛い気分を紙という「外部」に出すことで客観的に取り扱うことができます。手紙や日記などを書くことが好きな人におすすめです。この筆記系の応用が、後で説明する考え方トレーニングです。

組み合わせて、「ポジティブな音楽を聴きながらリズムよく散歩する」等、自分にあっている、効果があると思うものを実行してみましょう。

ちなみにTVゲームやスマホゲームは含まれていません。

海外では、どんなゲームでも短時間ならストレス軽減効果があるという研究結果もありますが、やり込みのための作業、オンライン対戦で負けてばかり、課金しても欲しいカードが出ない、見知らぬ対戦相手からの挑発、長時間にわたるプレイなどは、「むしろストレスが高まる」ということを皆さんの方が実感されているのではないでしょうか。

これらの気分転換や気晴らしをしても、ストレスが何日も軽減しない場合は、次に紹介する考え方のトレーニングがお奨めです。

「考え方」こそネガティブの発生源

実はストレスの程度を左右するのは、「どんなことが起きたか」という出来事や状況ではなく、「それについてどう考えたか」という考え方の癖=『認知』が重要なのです。

出来事と認知、気分、行動の関係性を表した「認知モデル図」という表(表2)をご覧ください。

認知とストレスの関係

表2:認知モデル図

それぞれの関係性を「宿題」を例で挙げて説明します。

例えば、「明日提出〆切の宿題が1問も終わっていないことを前夜になって気づいた」という【状況】になった人がいたとします。

その際、

【認知】「今からでも十分間に合うな。」と思っている場合は、

【気分】【身体反応】「落ち着いて、いつも通り」に、

【行動】宿題を「取り組む」でしょう。

一方、全く同じ状況でも

【認知】「も、もう無理だあ!」と思っている場合は、

【気分】「焦り・罪悪感」を感じ、

【身体反応】「冷や汗を流し」ながら、

【行動】「どうしようどうしようと部屋の中をセカセカと歩き回る」かもしれません。

そういうとき、ネガティブ感情はここがチャンスとばかりに追い討ちをかけます。

【認知】「きっと怒られる!」「クラスで自分だけ宿題が出せないに違いない!」などの悪いイメージが次々と浮かびはじめ、

【気分】「不安・恐怖」を感じるようになり、

【身体反応】「お腹のあたりが痛く」なってきます。仕方なく

【行動】「トイレに長時間篭ったり」「机の周りを掃除したり」しますが、時間はさらに過ぎ、

【認知】「ああ、もうゼッタイダメだ」と、

【気分】「無力感」を感じ、最後は

【行動】「早々と寝る」という手段をとるも、何度も明日の不安が頭に浮かび・・・

(以下略)

いかがでしょうか。

【認知】の部分がいかに【感情】【身体反応】【行動】を左右し、それらが相互に作用しているかを理解いただければOKです。

さて、それをふまえると、ネガティブな感情を感じる前後で、この【認知】を都合よく変えられれば、ネガティブ感情の連鎖を止められるということになります。

辛さにつながる認知を書き換え、ネガティブな気分を軽減するトレーニングがあります。それが、「考え方トレーニング」です。(心理療法では認知療法、認知行動療法が代表例)

次の回で、まずは自分の考え方の癖やパターンについて知りましょう。