湘ゼミコラム

勉強法

小学生が勉強しない9つの原因と今日からできる具体的な対策を解説

「小学生の子どもが、勉強しない。どうしたらいいの?」

そんな悩みを抱える方は、多いのではないでしょうか。

近年、デジタルデバイスの普及によって、ゲームやYouTubeなどエンタメのあり方が変わりました。子どもたちの環境も大きく変化しています。

適切な対策を行わないと、子どもたちの学力低下や学習習慣の喪失など、さまざまなリスクが考えられます。

この記事では小学生が勉強しない原因を確認したうえで、具体的な対策を解説します。

「親として、どう接するべきか?」という心構えについてもお伝えしますので、参考にしていただければ幸いです。

自主的に勉強するきっかけを早期につかみ、小学生の時間を有意義に過ごせるようにしていきましょう。

1. 小学生が勉強しないのはなぜ?9つの原因

まず、小学生が勉強しないのはなぜなのか、原因を見ていきましょう。心理的なメカニズムを理解すれば、効果的な対策を検討できます。

ここでは代表的な9つの原因を取り上げます。

1-1. 勉強が難しく感じる

1つめの原因は「勉強が難しく感じる」です。

「難しい」と感じることは、学習意欲の低下や逃避行動につながることを、知っておきましょう。

心理学では、この現象は『達成目標理論(Achievement goal theory)』で、説明されます。

達成目標理論では、〈適度な難易度の目標に挑むことで“やる気”を感じ、学習意欲が高まる〉と考えます。

難易度が高すぎる目標では、勉強する気がなくなってしまうのです。

お子様がやる気を失っているときには、“現在の学力に対して、ちょうどよい難易度の学習内容”に取り組めているか、チェックしてみましょう。

参考:ScienceDirect Topics「Achievement Goal Theory – an overview」

1-2. 遊びやゲームへの興味が強い

2つめの原因は「遊びやゲームへの興味が強い」です。

子どもたちは、遊びが大好きです。その中で新しいことを学んでいきます。しかし、遊びやゲームへの興味が強すぎると、勉強を邪魔することがあります。

このメカニズムには、『報酬系』と呼ばれる脳のシステムが関与しています。

【報酬系とは?】

人・動物の脳において、欲求が満たされた時、あるいは満たされると分かった時に活性化し、その個体に快の感覚を与える神経系のことです。
⇒ある行動をやり遂げることで満足感や達成感を得る回路

出典:広島県 資料「脳の働きと認知特性」

遊びやゲームでは、成功体験や達成感を、即時に得られます。端的にいえば、脳が快感を覚えやすいのです。

ドーパミンという快楽物質が脳内で分泌され、「もっともっと遊びたい、ゲームをしたい」という気持ちが引き起こされます。

さらに、今日のデジタルゲームは、設計段階から人々を夢中にさせるための仕掛けが施されています。

遊びやゲームが好きな子にとって、報酬系に対抗して勉強することは、非常に困難なのです。

1-3. 強制されることにストレスがある

3つめの原因は「強制されることにストレスがある」です。

子どもにとって、親や先生からの強制や期待はストレスとなり、学習意欲を阻害することがあります。

やる気を引き出す動機づけで重要な概念として『自己決定理論』があります。

自己決定理論では、次の3つの要素が満たされなければ、自ら学ぶ意欲は生まれません。

【自己決定理論の3要素】

自己決定感:「自分のことは自分で決めている」という気持ち

有能感:「自分は(やろうと思えば)勉強ができるんだ」という気持ち

他者受容感:「自分はまわりの大切な人から受容されている」という気持ち

「勉強しなさい」と強制したり怒ったりすることは、ともすれば上記3要素をすべて阻害してしまいます。

参考:桜井茂男, 『学習意欲の心理学 自ら学ぶ子どもを育てる』, 誠信書房, 1997年, p.19

1-4. 集中力が続かない

4つめの原因は「集中力が続かない」です。

子どもが勉強を嫌がる一因として、集中力の短さが考えられます。

子どもの脳は発達途中であり、成人と比較して集中できる時間は短いとされています。

【参考:集中力の持続時間】

年齢子供が集中できる平均時間
3歳6分~15分
4歳8分~20分
5歳10分~25分
6歳12分~30分
7歳14分~35分
8歳16分~40分
9歳18分~40分
10~12歳20分~45分

Source: Compiled from multiple sources by Helen F. Neville; Studydog; Pbs.org;

出典:Lingo Bus「How Long Can Your Child Stay Focused and How Can You Help」

「小学生が勉強しない」というとき、たとえば「1時間、集中して机に向かえない」という意味であれば、脳の構造として仕方ないケースが多いでしょう。

1-5. 自主性がない

5つめの原因は「自主性がない」です。

主体性を持った行動を促しても、まだ小学生のうちは、自主性が育ちにくいタイプの子がいます。

そのような子は、勉強に対して受け身で、自ら積極的に取り組む姿勢が見られないことが多いでしょう。

小学生の自主性が育ちにくい原因としては、本人の個性以外に、以下が考えられます。

成長過程:自主性は子どもの成長とともに育成されます。小学生では、発達段階がまだ途中であるため、自主性が育ちにくいケースがあります。

家庭環境:子ども自身の意見や考えを尊重する環境が整っていない場合、自主性は育ちにくくなります。

友人関係:友人関係がうまく築けない場合、子どもが自主的に行動する機会が減ります。友達との関わりが少ないと、自主性の成長に影響を及ぼすことがあるでしょう。

教育機関の役割:自主的な学びの機会が学校で不足している場合、自主性の育成が難しくなります。

1-6. 勉強のやり方がわからない

6つめの原因は「勉強のやり方がわからない」です。

この問題は小学生に多く見られる現象です。とりわけ、複雑な課題や新しい学習内容に対して、どう取り組めばよいか戸惑うケースが見られます。

原因として、以下が考えられます。

学習方法の指導不足:学校や家庭での具体的な学習方法の指導が不足していると、子どもはどう取り組めばよいかわかりません。

思考力の育成:問題解決のための思考力がまだ発達していない小学生は、自らの力で学びの方法を見つけるのが難しい場合があります。

学習ツールの不足:適切な学習教材やツールが整っていないと、子どもは効率的な学び方を身につけるのが困難です。

このような要素が組み合わさると、小学生が「勉強のやり方がわからない」と感じることがあるのです。

1-7. 勉強する意味がわからない

7つめの原因は「勉強する意味がわからない」です。

子どもが「なぜ勉強をしなければならないのか」という疑問に明確な答えを見つけられない場合、勉強に対する動機づけは難しくなります。

具体的には、以下の要素が関連しています。

目的がわからない:勉強する目的が明確でないと、勉強する必要性を感じられなくなります。

関心が持てない:子ども自身の興味や関心と学習内容がつながらない場合、勉強する意味を感じにくいでしょう。

現実と結びつかない:学びの内容が日常生活など身近な現実と関連づけられていないと、価値を理解できなくなります。

親の価値観の影響を受ける:親が学びの価値をどう捉えているかも、子どもの学びへの意義付けに影響します。

このような理由で勉強する意味がわからない子は、報酬(脳の快感)をすぐ得られるゲームや遊びを優先してしまいます。

1-8. 勉強する環境・習慣がない

8つめの原因は「勉強する環境・習慣がない」です。

これは物理的な環境と時間的な習慣の両方を指します。この2つの要素は、子どもの学習意欲と成績に大きな影響を与えます。

【勉強する環境・習慣の例】

・静かな空間

・座りやすい机や椅子

・快適な室温と湿度

・必要な教材やツールの整備

・毎日固定された勉強の時間帯

・家族やきょうだいの協力的な態度

たとえば、本来は勉強する意欲を持っている子でも、きょうだいの都合などで勉強に適した環境がないと、勉強しなくなるケースがあります。

1-9. 習い事や友人関係などで疲れている

9つめの原因は「習い事や友人関係などで疲れている」です。

大人であれば、疲れているときに家事や仕事のやる気が出ないことは当然に認知されています。しかし、“子どもの疲れ”は見逃されやすいため、注意したいところです。

子どもの生活は、勉強だけでなく、さまざまな活動や人間関係によって構成されています。

たとえば、クラブ活動や音楽のレッスンなどに多くの時間とエネルギーを割いている子は、それらの活動から疲労が生じて、学習意欲に影響を及ぼすことがあります。

肉体的な疲労だけでなく、心理的な疲労も学業に影響します。たとえば、以下は脳疲労(脳が主体となる疲労現象)の影響です。

脳疲労と睡眠】 

・脳内に疲労物質が蓄積すると、脳の認知神経機能が混乱する。また、睡眠不足は脳細胞の成長を妨げる。

・養育態度が、統制的(子どもの行動をコントロールしようとする関わり)な場合、受容的(子どもの主張を受け入れ、快適な環境を心がける)な場合と比較して、睡眠の質を下げる傾向にある。

慢性的な脳疲労の影響】 

・記憶、言語機能、感情(喜怒哀楽)等に関係する脳領域の体積が減少する。

・若い時から慢性疲労が続くと、高齢期には通常よりも早く脳体積の減少を招く可能性がある。

高疲労・睡眠異常の子ども】 

・興味がある活動は、健常児と意欲に差は無い。

・興味がわかない活動は、健常児よりも学習意欲低下の差が大きい。

出典:石川県教育委員会「タウンミーティング案内」 

子どもの人間関係、とくに友人関係の対人ストレスがないか、確認が必要です。

以上、9つの原因をご紹介しました。

勉強しない小学生には、彼ら彼女らなりの理由があることがわかると、頭ごなしに叱るのではない対処法を取りやすくなるはずです。

次章では、対策について見ていきましょう。

2. 小学生が自分から勉強するようになる対策

小学生が自分から勉強するようになるために、試す価値のある対策は複数あります。

その子の個性によって、合う・合わないがありますので、まずは幅広くチャレンジしてみましょう。

以下に、小学生が自発的に勉強するための具体的な手法をご紹介します。

2-1. 15分を1セットとして短く勉強する

1つめの対策は「15分を1セットとして短く勉強する」です。

前述のとおり、小学生の子どもたちは、集中力が一定時間しか続きません。

この集中力の限界を超えて勉強を強いれば、効率が下がるばかりか、勉強嫌いになってしまう危険があります。

そこで、「15分を1セット」として、短く勉強する方法が有効です。

【具体的なやり方】

タイマーをセット:15分間の学習時間を明確にするため、タイマーを使用します。子どもにも「これが鳴ったら休憩だよ」と伝えて、一緒にセットしましょう。

学習開始:タイマーをスタートさせたら、学習を始めます。この15分間は、子どもが集中して取り組む大切な時間です。途中で話しかけず、子どもが自分で考え、進められるようサポートします。

タイマーのチェック:15分が経過したら、タイマーが鳴ります。子どもにも「15分経ったよ」と伝え、一緒に休憩に入ります。

休憩時間:15分の学習が終わったら、休憩を取ります。この時間は、子どもが自由に過ごせるようにします。

再開の準備:休憩が終わったら、再び15分間の学習を始めます。タイマーをリセットし、次のセットに備えます。

お子様が楽しく使えるようなタイマーを探してみるのも、よい方法です。

【楽しいタイマーの例】

出典:Amazon

2-2. ZPDの範囲内の教材や学習法を探す

2つめの対策は「ZPDの範囲内の教材や学習法を探す」です。

ZPD(Zone of Proximal Development:発達最近接領域)は、教育心理学で用いられる概念で、子どもが自力でできることと、大人の助けがあればできることの間の領域を指します。

難しすぎず、簡単すぎない範囲を見極める際に、この概念を知っていると便利です。ZPDの領域内で学習することで、子どもの成長が促進されます。

【具体的なやり方】

子どもの現在の学力を把握:まずは、子どもが何ができるのか、何ができないのかを把握します。学校の成績や先生の意見などを参考にしましょう。

ZPDの範囲を見極める:子どもが自力でできることと、助けがあればできることの間の範囲を見極めます。この範囲がZPDです。

適切な教材を選ぶ:ZPDの範囲内で、子どもが興味を持ち、挑戦できる教材を選びます。教科書や参考書など、レベルに合ったものを選びましょう。

学習法を工夫する:ZPDの範囲内で学習するために、学習法を工夫します。たとえば、一緒に問題を解いたり、ヒントを出したりします。

成長を確認する:学習を進めながら、子どもの成長を確認します。少しずつ難しい問題に挑戦させるなど、難易度を拡張していきましょう。

参考:ELSA BILLINGS et al.「Zone of Proximal Development: A Perspective for Teaching English Learners」

2-3. 勉強に適した空間を準備する

3つめの対策は「勉強に適した空間を準備する」です。

学習効率を高めるためには、勉強する環境が大切です。静かで明るく、落ち着いた空間は、集中力を高めます。

【具体的なポイント】

机と椅子の選定:子どもの体に合った机と椅子を選びます。家庭のリビングでも、工夫して勉強スペースを作ります。

照明の調整:自然光がしっかり入る窓際や、昼光色(青みのある明るい色)の電球を使って、明るさを確保します。(※)

音の対策:とくに、幼いきょうだいがいる家庭では、部屋のドアを閉めるなどの工夫が必要です。気が散らずに集中できる空間を作ってあげましょう。

整理整頓:机の上はスッキリとさせておきます。教材以外のものは片付けて、他の物事に興味が移らないように配慮しましょう。

気に入ったアイテムの配置:お気に入りのアイテムを置くことで、勉強の楽しみを見つけられます。

親のサポート:最初のうちは親が一緒にいて、勉強の進め方をサポートします。慣れたら、自分で取り組めるようにします。

家庭のルール作り:家庭内で、勉強時間を守るルールを作ります。たとえば、「夕食後はみんな静かにする時間」といったルールを家族で共有します。

※補足として、間接照明や温かい印象の電球色の照明を使っているお宅は、多いかと思います。

しかし、小学生の学力をアップさせるためには、昼光色(青みのある明るい色)の電球で、室内をきちんと明るくしたほうが効果的です。

参考:米国の小学生を対象とした研究

21,000人の米国の小学生を対象としたある研究によると、1学年を通じて、日当たりの悪い教室にいる児童に比べ、学校生活中に太陽光を多く浴びている児童の方が、読解力が26%、算数の成績が20%高かった。しかし、教室の自然光が思ったより少なかったとしても、人工照明を青色強化電球に取り替えることで、生徒の認知能力が向上することが他の研究で示されています。

出典:Edutopia「The Science of Effective Learning Spaces」

2-4. 3分でよいので習慣化する

4つめの対策は「3分でよいので習慣化する」です。

勉強を習慣化することは、小学校だけでなく、今後の人生にもかかわる取り組みです。

勉強時間は、最初は3分でも構いません。「毎日勉強するのが当たり前」の状態を作ることが重要です。

【具体的なやり方(3分でスタートする場合)】

毎日の固定時間を決める:毎日同じタイミングで、3分、勉強する時間を設けます。たとえば、朝食前や夕食後など、ルーティンに組み込んでください。

3分間の内容を決める:3分間でできる内容を決めます。たとえば、漢字の書き取りや計算問題など、決めた時間で完了する内容を選びましょう。

タイマーを使用して計る:3分間だけの学習なので、タイマーを使って時間を計ります。子どもにも「3分やろうね」と伝えて始めます。

少しずつ時間を増やす:3分間の学習が習慣になったら、少しずつ時間を増やします。5分、10分と、無理のない範囲で学習時間を延ばしていきます。

習慣化するために最も重要なのは「繰り返すこと」なので、時間の長短にはこだわる必要はありません。

「いつ・何分・何を」やるかを、できる範囲で決めて、毎日繰り返していきましょう。この習慣は、夏休み・お正月・旅行中などでも、変わらずに続けます。

なお、習慣化の研究によれば、

〈人が新しい習慣を形成するには18〜254日かかり、
新しい行動を自動的にできるようになるには平均66日かかる〉

とされています。

参考:Lally et al.「How are habits formed: Modelling habit formation in the real world」

お子様と一緒に、「まずは2ヵ月チャレンジする」と決めて、楽しみながら続けてみましょう。

2-5. 疲れすぎないようにケアする

5つめの対策は「疲れすぎないようにケアする」です。

子どもの疲労を溜めないように注意しましょう。疲れすぎると、学習効率が下がり、健康にも影響します。

【基本ポイント】

十分な睡眠の確保:睡眠不足は脳細胞の成長を妨げてしまうため、十分な睡眠時間を確保します。

体調のチェック:子どもの体調を常にチェックします。顔色や様子がおかしいときは、無理せず休みます。

栄養バランスの確保:バランスの取れた食事を用意し、一日3食をしっかり食べる習慣を作りましょう。

適切なスケジュール管理:クラブ活動、習い事、遊びなどスケジュールを詰め込みすぎないようにします。

脳の休息という意味では、とくに睡眠が重要です。

近年、学童期の子どもたちの睡眠習慣の問題が指摘されています。以下は、厚生労働省のWebサイトからの引用です。

日本の小・中・高校生は世界的に見ても最も夜更かしをしていることで有名です。

いくら夜更かしをしても登校時間は同じですから、睡眠時間は短くなり、朝に起こされてもボーっとしたまま朝食も摂らずに登校し、日中には強い眠気をこらえたまま授業を受けている子どもが数多くいます。

眠気のためにもうろうとして授業に集中できず、学習障害や注意欠陥多動性障害などの発達障害と間違われてしまったケースもあります。

出典:厚生労働省「子どもの睡眠」

上記のようなケースを回避するためには、以下を実践しましょう。

早起きから始める:早寝早起きではなく、早起き早寝から始めることで睡眠習慣を改善しやすくなります。まずは1週間、がんばって早起きさせましょう。

朝日を浴びる:起床したらベランダなどに出て日光を浴びます。朝、強い日光を目に入れることで、体内時計が調整されるためです。

休日でも寝坊をしない:お昼近くまで寝坊すると体内時計が一気に遅れるため、休日でも平日と同じ時刻に起床するようにします。

出典:厚生労働省「子どもの睡眠」

米国国立睡眠財団(NSF)によれば、

〈6~13歳の推奨睡眠時間は 9~11時間〉

とされています。

小学生は、最低9時間以上、しっかり睡眠を取るようにしましょう。

出典:Hirshkowitz et al.「National Sleep Foundation’s updated sleep duration recommendations: final report」

2-6. 現実と勉強をリンクさせる

6つめの対策は「現実と勉強をリンクさせる」です。

学びの内容を現実の生活と関連づければ、子どもにとって意味のある学びになります。実生活で使える知識や技術を学ぶことで、学びの楽しさや価値を感じられます。

【具体的なやり方】

生活との関連付け:学びの内容を日常生活と関連づけます。たとえば、算数の計算をおこづかいの管理に使うなどして活用します。

親子での実践:親子で一緒に料理を作る、家でできる実験をするなど、学んだことを実際に行います。

現地学習:学校で学んだことを、博物館や公園で実際に見るなど、現地で学びます。

職業体験:将来の夢や職業について学び、実際の職場を見学するなど、現実と学びをつなげます。

ニュースとの関連付け:ニュースなどを一緒に見て、学校で学んだことと関連づけます。社会の動きと学びのつながりを感じます。

娯楽との結び付け:子どもが好きなアニメやゲームと学びを結び付けます。好きな分野と勉強がリンクすれば、勉強への興味が高まります。

勉強に意味を見いだせない状態の子どもに、勉強を強制しても、ストレスの原因となってしまいます。

それぞれの個性に合わせて、現実との接点を作り、自然に興味が向かう工夫をしていくことが大切です。

2-7. 勉強の内容ではなく“やり方”を教える

7つめの対策は「勉強の内容ではなく“やり方”を教える」です。

親子で勉強に取り組むときには、学習内容だけでなく、方法論を教えることに重点を置きましょう。

学校では内容を教えてくれますが、子どもに合った学び方は、家庭でしか教えられないからです。

とくに、「勉強がわからなくなったときの解決策」「勉強のやる気が出ないときにやる気を出す方法」は、小学生のうちから教えて損はありません。

【勉強がわからなくなったときの解決策の例】

「わからない」と伝える:わかった振りをせず、わからないときには堂々と「わからない」と言うように教えます。

質問する:授業中などに先生に質問する方法を教え、恥ずかしがらずに質問する大切さを説明します。

教科書をさかのぼる:「わからないときは、前のページに戻ってみよう」と教え、基礎を復習する重要性を伝えます。

友達と教え合う:「わらかないところがあったら、友達を教えてもらおう。自分がわかるところは友達に教えてあげよう」と、協力して解決する姿勢を教えます。

自分で調べる:図書館での本の探し方や辞書・百科事典の引き方など、自分で答えを探すプロセスを教えます。

大人から見れば何でもないことに思えるかもしれませんが、明示的に言語化して教えることで心に残り、実際の行動に移せるようになります。

同じように、勉強の意欲が出ない子には、「どうすればやる気を出しやすいか」を教えましょう。

【勉強のやる気を出す方法の例】

好きな教科から始める:「好きな教科から始めると、楽しいからやる気が出るよ」と教えます。

小さな目標を立てる:「今日は3ページ進もう!」と、小さな目標を設定する方法を提案します。

勉強の場所を変える:「部屋を変えると気分も変わるね」と、場所の変更で気分を高める方法を教えます。

お気に入りの道具を使う:「好きな筆箱を使うと、勉強が楽しくなるよ」と道具を工夫する方法を伝えます。

お気に入りの音楽をかける:「好きな音楽を聴くと、勉強がはかどるよ」と、音楽を取り入れる方法を提案します。

勉強が進んだらシールを貼る:「シールが増えると、うれしいよね」と達成感を可視化する楽しみを教えます。

成功体験を振り返る:「前にうまくいったことを思い出そう」と、成功体験の振り返りを励みとする方法を教えます。

このように“やり方”を教えることで、子どもは自分で学ぶ力を身につけます。

さまざまな分野を自分で学べるようになり、一生涯にわたる学びの基盤が築かれます。

2-8. 困っていることはないか尋ねる

8つめの対策は「困っていることはないか尋ねる」です。

常日頃から親子のコミュニケーションを大切にすると同時に、定期的に、

「何か困っていることはない?」

と尋ねて、お子様が困っていることについて、手助けをできるようにしましょう。

勉強でつまずいている場合には、わかりやすい教材を購入したり、講習や個別指導を検討したりと、さまざまな対処が可能です。

あるいは、学校や友人関係のトラブルなどで悩みを抱えている場合、それを素直に親に言える子と言えない子がいます。

「学校は楽しい?」

といった声掛けでは、「うん」としか答えられないケースも多いでしょう。

そこで、

「困っていることは?」

と限定的に質問することで、本音を引き出しやすくなります。

「必要であれば、いつでも力になる」という姿勢を明確に伝えることは、他者受容感(自分はまわりの大切な人から受容されているという気持ち)の形成にも寄与し、学習意欲の土台となります。

2-9. 勉強が好きになる塾を選ぶ

9つめの対策は「勉強が好きになる塾を選ぶ」です。

勉強しない小学生の場合、学校だけでなく塾のサポートを得ることで、スムーズに学力向上につながるケースが多くあります。

実際、小学生が学習塾へ入会する理由で最も多いのが、お子様の「学習習慣が定着しない」というものです。

小学生の塾選びのポイントは、次の2つの要素を満たしている塾を探すことです。

1. 授業自体のわかりやすさ・楽しさ

2. 先生自体の明るさ・楽しさ

この2つの「楽しい」がある塾に通うと、小学生は勉強が好きになっていきます。

上記について詳しくは「小学生から通塾する理由は?子どもに合う塾の探し方」にて解説していますので、参考にしてみてください。

3. 「小学生が勉強しない」と悩んだときの心構え

最後に、「小学生が勉強しない」と悩んだとき、どのような心構えでいればよいのかお伝えします。

1. 親としてのあり方に迷ったときのヒント
2. 家庭内で抱え込みすぎない
3. 小学生には無限の可能性がある

3-1. 親としてのあり方に迷ったときのヒント

「子どもとどう接したらいいのか、わからない」と悩んだときのヒントをひとつ、ご紹介します。

保護者と子どもの学力に関する研究では、学力の高い子どもには以下の特徴があると指摘されています。

【高学力の子の家庭の特徴】

小学生について見ると、第一に、学力の高い子供、特に知識の活用力が高い子供ほど、学習習慣のみならず、読書の習慣がある。

第二に、学力の高い子供の家庭ほど、保護者が子供の時間の使い方をコントロールし、計画的に勉強させるだけでなく、本や新聞等の活字文化や、外国語や外国の文化に触れる機会を意識的に作ろうとする傾向がある。

第三に、「勉強や成績のこと」「将来や進路」「地域や社会の出来事やニュース」を、親からだけでなく子供からも積極的に話す関係性が、高学力層の子供の家庭の文化的特徴の一つといえる。

第四に、美術館、劇場、博物館、科学館、図書館等の文化施設に子供と一緒に行く頻度はいずれの学力層でも思ったほど多くはないが、特に学力D層(注:学力が低い層)においては、美術館や劇場に「行ったことがない」割合が2割を超えているだけでなく、近隣で無料という意味では誰にとっても利用しやすいはずの図書館にも「ほとんど行かない」割合が35%と多い。

第五に、高学力の子供の家庭では、保護者自身が本や新聞といった活字メディアを頻繁に利用する割合が高まる。

出典:お茶の水女子大学「保護者に対する調査の結果と学力等との関係の専門的な分析に関する調査研究」

ご家庭の状況と照らし合わせて、取り入れられる部分があれば、取り入れてみましょう。

3-2. 家庭内で抱え込みすぎない

小学生の子どもが勉強しないとき、親として不安になるのは当然といえます。

しかしながら、不安な気持ちが大きすぎれば、子どもにも伝わり悪影響になるため、注意が必要です。

家庭内だけで抱え込もうとせず、第三者の協力を積極的に得るように、考えてみてください。

【第三者の協力の例】

学校の先生に話を聞く:子どもの学校での様子から的確なアドバイスをもらえます。

塾の先生に相談する:塾の先生は勉強指導のプロですから、子どもの弱点をつかみ、克服する方法を一緒に考えてくれます。

ママ友・パパ友と共有する:同じ悩みを抱える親同士で支え合いが可能です。

先輩パパ・ママの経験談を聞く:過去の経験に基づいた実践的なアドバイスが期待できます。

3-3. 小学生には無限の可能性がある

小学生の現在、勉強で苦労していても、未来の道には無限の可能性があります。

小学生の時期は、お子様が多岐にわたる興味の基盤を形成する、重要な時期です。大局的な視点で、成長を見守りましょう。

【小学生の成長を見守るポイント】

興味を育む:小学生は興味の分野が広がります。たくさんの未知のことを経験させてあげましょう。

挑戦する意欲:失敗を恐れずに新しいことに挑戦する意欲を大切にします。これは成長の大きなステップです。

無限の可能性:無限の可能性を秘めた子どもの成長を、信じてあげることが重要です。

親御様がお子様を信じる気持ちは、結果として本人の有能感(自分はやればできる)につながって学習意欲を高め、好循環が始まります。

前向きな気持ちで、成長を見守っていきましょう。

4. まとめ

本記事では「小学生が勉強しない悩み」について解説しました。要点をまとめておきましょう。

小学生が勉強しない理由として、以下が考えられます。

1. 勉強が難しく感じる

2. 遊びやゲームへの興味が強い

3. 強制されることにストレスがある

4. 集中力が続かない

5. 自主性がない

6. 勉強のやり方がわからない

7. 勉強する意味がわからない

8. 勉強する環境・習慣がない

9. 習い事や友人関係などで疲れている

小学生が自分から勉強するようになる対策として、以下をご紹介しました。

1. 15分を1セットとして短く勉強する

2. ZPDの範囲内の教材や学習法を探す

3. 勉強に適した空間を準備する

4. 3分でよいので習慣化する

5. 疲れすぎないようにケアする

6. 現実と勉強をリンクさせる

7. 勉強の内容ではなく“やり方”を教える

8. 困っていることはないか尋ねる

9. 勉強が好きになる塾を選ぶ

具体的な対策を実践することで、勉強しなかった小学生が勉強好きに変わるケースは数多くあります。さっそく今日から、チャレンジを始めましょう。